topへ
FeRAMをもっと知る
FeRAMをもっと知る

FeRAMをもっと知る

2024.9.25

FeRAMの製造技術革新:スパッタ法によるPZT強誘電体膜の成膜

PZT強誘電体膜をスパッタ成膜したい、そうだ量産装置つくっちゃおう

FeRAMは、データ保存に用いられる不揮発性メモリの一種で、その特性から広く利用されています。そのFeRAMの製造において、PZT強誘電体膜の成膜は重要な工程です。ここでは、FeRAM製造の歴史と共にPZT強誘電体膜の成膜に関する技術革新について見ていきます。

FeRAMの製造プロセスの概要

FeRAM(1)は、PZT(2)強誘電体膜を上下の電極で挟んだ構造を持っています。これにより、高いデータ保存能力と高速な書き込み・読み出しが可能となっています。

(1)FeRAM : Ferroelectric Random Access Memory 強誘電体メモリ 
(2)PZT  : lead zirconate titanate チタン酸ジルコン酸鉛

1999年のFeRAM量産に向けた課題

FeRAMの量産化が進む中、PZT強誘電体膜の成膜方法が注目されました。当時はゾルゲル法(3)が一般的でしたが、より量産効率の高いスパッタ法(4)の採用が模索されました。

(3)ゾルゲル法 : ゾルゲル法は化学的な湿式法(液相法)の一種で、ゾル状態(液体に分散したコロイド状の粒子)からゲル状態(連続的な固体網目構造)を経て薄膜を形成する方法

(4)スパッタ法  : スパッタ法は物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)の一種で、真空中でプラズマを利用してターゲット材(成膜したい材料)をスパッタ(飛散)させ、その原子や分子を基板上に堆積させて薄膜を形成する方法、PZTターゲットは絶縁物であるため、スパッタ法で一般的な直流(DC)プラズマではなく、高周波(RF)プラズマを用いる

量産装置の開発ストーリー

当時のスパッタ法は、PZTの膜組成の制御が難しく、プラズマの安定化も課題でした。そこで、装置メーカー(ULVAC)との共同開発により、プラズマの安定化と膜組成の制御が可能な量産装置が開発されました。このブレークスルーは、以下の3つの要素により実現されました(5)(6)(7)。①高密度ターゲットによるスパッタ制御、②シールド電位による壁面制御、③静電チャックによる温度制御。

これらの開発過程で当社のエンジニアたちは、装置の内部構造を徹底的に理解し、技術革新に貢献しました。

(5)  K.Suu, T.Masuda, Y.Nishioka and N.Tani, “Process Stability Control of Pb(Zr,Ti)03 Ferroelectric Thin Film Sputtering for FRAM Application”,  Proceedings of the Eleventh IEEE International Symposium on Applications of Ferroelectrics, pp.19-22, 1998.

(6) Koukou Suu, Akira Osawa, Yutaka Nishioka and Noriaki Tani, “Stability Control of Composition of RF-Sputtered Pb(Zr, Ti)O3 Ferroelectric Thin Film”, Jpn.J.Appl.Phys. Vol.36, pp.5789-5792, 1997.

(7) K. Hidaka, S. Hashiguchi, S. Nagayama and P. Kim, “Properties of high-density (Pb, La) (Zr, Ti) O3 ceramics for sputtering target”, Vacuum Vol.59, pp.451-458, 2000.

装置の成果と今日への影響

量産装置の開発により、PZTの膜組成を制御しやすくなり、FeRAMの品質向上が実現しました。また、その過程で培われた技術は、今日でもFeRAM製造において重要な役割を果たしています。

当社のエンジニアは、装置の中身をしっかりと理解し、量産装置の開発にも積極的に関わりました。この姿勢は、当社のDNAの一部となり、今日でも同社のエンジニアたちは、装置を含めた製造プロセス全体を俯瞰し、問題解決に取り組んでいます。この姿勢が、FeRAM製造における技術革新の原動力となっています。

まとめ

FeRAMのものづくりは、技術革新と挑戦の連続でした。過去の成果を基に、今後もさらなる進化が期待されます。若手エンジニアへの技術伝承と共に、FeRAMの未来を切り拓いていきます。