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FeRAMをもっと知る
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2024.9.24

FeRAMの大容量化を実現するHZO FeRAMの研究開発

PZT FeRAMのその先へ

FeRAMは書換耐性が高く、高速書き込みが可能で、また書込電力も低い優れたメモリですが、大容量化が課題となっています。当社ではFeRAMの大容量化のため、新しい強誘電体HZOを活用したFeRAMの研究開発を行っています。

PZT FeRAMは優れたメモリ

PZT FeRAM(Lead Titanate Zirconate Ferroelectric Random Access Memory)は書換耐性が高く、書込速度が速く、書込電力が低い等の特長を持つ優れたメモリです。

書換耐性は、NAND FLASH、NOR FLASH,、EEPROM、ReRAM、PCRAMの他の不揮発性メモリに対して桁違いに耐性が高い1014(100兆)回です。書込み速度は、NAND FLASH、NOR FLASH、EEPROM、ReRAM、PCRAMの他の不揮発性メモリに対し50ns未満と高速です。

書込電力は、MRAM、ReRAM、PCRAMの他の不揮発性エマージング・メモリと比較して低くなります。PZT FeRAMが抵抗変化を利用しておらず、書込時にメモリ素子へ電流を流さないためです。MRAM、ReRAM、PCRAMなどのメモリは、書き込み時に抵抗の変化を利用するためメモリ素子へ電流を流しますが、電流が流れると電力=電圧×電流で電力消費が増え、書き込み電力が高くなります。

また、MRAMは磁性を利用していますが、PZT FeRAMは磁性を利用しておらず強磁界下でも制約不要という特長もあります。(表1)

表1. メモリ比較表
  • メモリ媒体が電子だと放射線の影響を受け易い、磁性体だと外部磁界の影響を受け易い、酸素・相変化物・強誘電体だとメモリ素子自体は放射線の影響にも外部磁界の影響にも強い。
  • メモリ原理が抵抗だと書込時にメモリ素子に電流が流れ消費電力を増やす、容量・トラップ電荷・分極だと書込時にメモリ素子に電流が流れないので書込電力が有利。
  • 書込消去昇圧回路要のものは書込消去に5Vを超える高電圧が必要で消費電力を増やす、不要のものは書込が2V未満で消去不要で消費電力が有利。
  • 揮発性が揮発だとデータ保持に電力が必要、不揮発であればデータ保持に電力不要。
  • FeRAMは不揮発性メモリの中ではMRAMに次いで書込時間が速い。
  • FeRAMは不揮発性メモリの中で書換耐性が高い。

PZT FeRAMは大容量化が課題

優れた特長を持つPZT FeRAMですが、課題も有ります。それは大容量化です。当社のPZT FeRAM量産世界最小セル、セルサイズ0.5um2を5mm□のチップにキャパシタを並べる場合のメモリ容量は16Mb (※1、※2)です。(図1)

図1. 当社量産世界最小セルメモリ容量例

PZTは75nm程度と厚い為、キャパシタサイズを小さくするのが困難です。PZT FeRAM理論上最小サイズのピラー・キャパシタ径375nmを5mm□のチップにキャパシタを並べる場合のメモリ容量は41Mbです。(図2)

図2. 理論上最小PZTキャパシタメモリ容量例

※1: b: ビット、記憶容量の単位
※2: K(キロ、千):1,000、M(メガ、百万):1,000,000、G(ギガ、十億): 1,000,000,000

PZTと同様な強誘電体HZO

PZTは強誘電体で、当社はその分極を利用して不揮発性メモリを開発・量産しています。HZO(Hafnium Zirconium Oxide)も強誘電体で、PZT FeRAMの優れた点を引き継ぎ、且つPZT FeRAMの課題である大容量化を実現できます。また、PZT FeRAMを開発・量産してきた当社の技術・ノウハウをHZO FeRAMに活用できます。

図3. 強誘電体結晶構造

HZO FeRAMは大容量化が可能

HZOは6nm程度と薄く出来る為キャパシタサイズを小さく出来ます。HZO FeRAMピラー・キャパシタ径は30nmが可能で、それを5mm□のチップにキャパシタを並べる場合のメモリ容量は6.4Gbです。(図4)

図4. HZOピラーキャパシタメモリ容量例

HZOキャパシタ共同研究状況

PZT FeRAMの課題である大容量化を実現する為に、当社ではHZO FeRAMの研究開発をおこなっています。

東京大学大学院と当社とが、低電圧且つ長寿命のHZOキャパシタを開発し、国際会議Symposia on VLSI Technology and Circuitsで発行される「Technical Digest」に掲載されました。

◆1V(ボルト)未満の極めて低い動作電圧で100兆回の書き換え回数を達成できる強誘電体キャパシタの開発に成功。

◆HZO強誘電体の低温作製・極薄膜化・高い強誘電特性を両立させる技術を確立し、配線工程中での作製・低電圧でのデータ読み書き・高信頼性を備えた強誘電体キャパシタを実現。

◆IT技術や人工知能計算に必要不可欠な要素である不揮発性メモリを高性能化し、コンピューティング技術のさらなる発展に貢献。(図5)

図5. HZOキャパシタ共同研究報告

それまで書換耐性1012回迄だったのを、東京大学大学院と当社とが1014回へ研究を進めたHZOキャパシタを共同で報告しました。(図6)

図6. 書換耐性1014回のHZOキャパシタ報告

更に、其れまで書込電圧2.5Vと高電圧だったのを、東京大学大学院と当社とが1V未満へ研究を進めたHZOキャパシタを共同で報告しました。(図7)

K. Tahara, K. Toprasertpong, Y. Hikosaka, K. Nakamura, H. Saito, M. Takenaka, and S. Takagi, Strategy Toward HZO-BEOL-FeRAM with Low-Voltage Operation (≤ 1.2 V), Low Process Temperature, and High Endurance by Thickness Scaling, 2021 Symposium on VLSI Technology

図7. 書込電圧<1VのHZOキャパシタ報告

PZT FeRAMのその先へ

PZT FeRAMは優れた特長を備えたメモリですが、大容量化に課題があります。当社はPZT FeRAMのその先を見据え、課題である大容量化を実現出来るHZO FeRAMの研究開発を進めています。