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FeRAMのBMSへの採用事例
EVバッテリのグローバルスタンダード:
100兆回の書換耐性が実現する効率化と再利用
EV(電気自動車)のバッテリーを管理するBMS(Battery Management System)でもFeRAMが利用されています。高書き換え耐性のあるFeRAMを利用することで、バッテリーの寿命を延ばしたり、バッテリーの再利用を評価する際に必要なデータの記録・保持が可能です。
目次
BMSとは
EV(電気自動車)に用いられるバッテリーは複数のセルから構成されており、セルごとに性能や寿命が異なります。このとき劣化の早いセルがあるとバッテリー全体の性能に影響し、早期に交換を余儀なくされる可能性があります。BMS(Battery Management System)を通じてバッテリー各セルのモニターユニットから温度、電圧、電流のデータを収集し、各セルの充電バランスを保つように指示します。これにより、弱いセルは頻繁に充電され、強いセルは頻繁に放電されることで性能が保たれ、バッテリーの寿命を延ばします。高頻度でモニターされたデータはメモリに保存されますが、125℃動作保証での10兆回の書換え耐性を実現するFeRAMを採用することでバッテリーのパフォーマンスを最大化します。下図のようにEVのバッテリーはモータの他、エアコンやヒーターの動力になりますが、ECUやBMSユニット部分のFeRAMにデータを書き込むことでバッテリーの使用状況をモニターします。
FeRAM利用における利点
FeRAMは世界ーシェアを誇るEV向けバッテリーメーカーで採用されています。EVのBMSでFeRAMを利用することで以下の利点が得られます。
バッテリーのパフォーマンス向上に寄与
自動車メーカーにはバッテリーの寿命表記に関して要請が出ており、バッテリーのパフォーマンス向上は今後ますます大きな課題となってきます。FeRAMの高速書き込みにより、使用電力が変わったタイミングに高頻度でバッテリーの使用状態を記録することで、イベント発生時の正確なバッテリー情報を残すことが可能となります。
BMSの機能は以下の5つです。
- セルの過充電、過放電を防ぐ機能
- セルの過電流を防ぐ機能
- セルの温度管理を行う機能
- 電池残量(SOC)を算出する機能
- セル電圧の均等化(セルバランス)を行う機能
*産業用リチウムイオン電池開発製造、およびパナソニックのウェブサイトより引用
セルは単電池(Unit cell)のことで、バッテリーの中で最小構成単位の電池です。バッテリーを使用していくとセルごとに劣化のスピードが変わってくるため均一化してバッテリー全体が長持ちするように調整します。例えば、バッテリが過度に高温になると劣化が早まったり発火したりする恐れがあります。高速/高頻度の書き込みにより計測温度を細かくモニターし、バッテリーのセルの充電量等を調整して温度を健全な状態に保つことができます。
バッテリーの再利用評価のための常時ロギング
今日のEVのバッテリーは寿命を延ばすだけでなく、再利用することで環境への負荷を抑えるように開発や法規制が進んでいます。特に欧州ではBMSによって記録したデータを使用済みバッテリーの再利用性を評価するために利用する動きが出てきており、欧州をはじめその他の地域の自動車メーカーにとても大きな影響となります。10兆回の書き換え耐性を実現するFeRAMを採用することで、バッテリー使用中の常時ロギングを可能にします。
バッテリー再利用をめぐる世界の動向
欧州
EUでは2025年以降に「バッテリーパスポート」というバッテリーのログ取得を義務付ける規制が法制化される見込みです。バッテリーの修理の必要性、再利用性のみならず、ドライバーの環境への配慮や走行データに基づく社会的信頼性などの基準を評価する目的もあります。「バッテリーパスポート」は「デジタル製品パスポート」の一環として開始されており、今後は個人の電子製品固有の情報がパスポートのように扱われ、サプライチェーンでのデータ連携や環境保全のための再利用に活用されることを目指しています。
中国
中国国家標準化管理委員会(SAC)の規格により150ミリ秒に一度のデータログ取得が必須となっており、中国国内の複数社がFeRAMを採用しています。国策としてEVの普及が進められており、BMSもそれに伴い普及していくと考えられます。また欧州とのデータ連携にも複数の自動車メーカーが関わっています。
米国
欧州や中国のような標準化された規格はありませんが、大手EVメーカーがBMSによりバッテリーの再利用を促進しているほか、多数のバッテリーリサイクル企業が事業を拡大しています。米国の複数のリサイクル企業が欧州、日本の自動車メーカーとも提携し、ますます大きくなる中古バッテリー市場に参入しています。
日本
2024年の経済産業省のモビリティDX戦略では特に欧州のバッテリー規制に注視して日本でもトレーサビリティ管理システムの構築、欧州のデータプラットフォームとの連携も議論されています。
まとめ
BMSにおいて、FeRAMは高速書き込み、高書換耐性により、正確なデータ取得、高頻度のデータロギングを行い、バッテリーの寿命年数の向上、再利用のための使用中のデータの取得を可能にします。また世界的なEVの普及に伴いバッテリーの中古市場が拡大し、BMSの開発や法規定に力を入れる地域が増えています。FeRAMはこれらの最新の動向に対応可能なソリューションとなります。