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FeRAMをもっと知る
PLCに利用される不揮発性メモリの事例と比較
工場の自動化に欠かせないPLC(Programmable Logic Controller)は、近年、IoT化やAI技術の導入により、より高度な処理能力が求められています。それに伴い、PLC内部で重要な役割を担う不揮発性メモリにも、高速化、大容量化、高信頼性化といった進化が求められています。
目次
PLCの進化とメモリの重要性
従来のPLCは、単純なシーケンス制御が中心でしたが、近年では、データ収集・分析、ネットワーク通信、高度なアルゴリズム処理など、より複雑なタスクをこなすようになりました。これらの処理を高速かつ安定的に実行するために、大容量で信頼性の高いメモリが不可欠です。
PLCに求められる不揮発性メモリの役割
PLCに搭載される不揮発性メモリは、主に以下の役割を担います。
- プログラムの格納: PLCの動作を制御するプログラムを格納します。
- 設定データの保存: PLCの動作パラメータや設定情報を保存します。
- データロギング: センサーデータや動作ログなどのデータを記録します。
これらのデータを確実に保存し、電源を切っても消失しないようにするために、不揮発性メモリが使用されます。
PLCで利用される不揮発性メモリの種類
PLCでは、用途や要件に応じて様々な種類の不揮発性メモリが利用されています。
- フラッシュメモリ: 大容量、低コストであることが特徴です。プログラムの格納やデータロギングに利用されます。
- EEPROM: バイト単位でのデータ書き換えが可能で、比較的低消費電力です。設定データの保存などに利用されます。
- FeRAM: 高速書き換え、低消費電力、高耐久性といった特徴を持つメモリです。頻繁なデータ書き換えが必要なアプリケーションに最適です。
- MRAM: 高速動作、高耐久性、低消費電力が特徴です。SRAMの代替として、高速なデータ処理に利用されます。
PLCに利用される不揮発性メモリのユースケース
PLCは様々な分野で利用されており、搭載される不揮発性メモリもそれぞれの特性を活かして幅広いアプリケーションで活躍しています。
フラッシュメモリ
利用されている分野の例:
- FA(ファクトリーオートメーション): 製造ラインの制御、ロボット制御、品質管理システムなど
- プロセスオートメーション: 化学プラント、製鉄所、発電所などのプロセス制御
- ビルディングオートメーション: 照明制御、空調制御、セキュリティシステムなど
- 社会インフラ: 交通システム、上下水道施設など
具体的な特徴が活かせるケース:
- 大規模なプログラムやデータの格納が必要な場合
- システムのアップデートが頻繁に行われる場合
- 運転データやログを長期間保存する必要がある場合
具体的なユースケース:
- 自動車工場の溶接ロボット制御: 複雑な溶接動作を制御するためのプログラムや、溶接条件のデータを格納
- 上下水道施設の監視システム: 各施設の運転状況や水位、水質などのデータを収集し、異常発生時にアラームを発報
- ビルディングのエネルギー管理システム: 照明、空調などの設備の稼働状況を監視し、エネルギー消費量を最適化
EEPROM
利用されている分野の例:
- 家電製品: エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの動作設定や運転履歴の保存
- OA機器: プリンタ、複合機などの設定情報の保存
- 医療機器: 患者情報、治療履歴、機器設定などの保存
- 計測機器: 計測データ、校正情報などの保存
具体的な特徴が活かせるケース:
- 設定値やパラメータの変更が頻繁に行われる場合
- データの書き換え回数が限られている場合
- 低消費電力性が求められる場合
具体的なユースケース:
- プリンタの印刷設定: 用紙サイズ、印刷品質、カラーモードなどの設定値を保存
- 医療機器の患者情報: 患者ID、氏名、病歴などの個人情報を保存
- 温度調節器: 設定温度、ヒステリシス幅などのパラメータを保存
FeRAM
利用されている分野の例:
- 産業用機器: 工作機械、ロボット、PLCなどの制御データやログの保存
- 車載機器: エンジン制御、ブレーキ制御、安全運転支援システムなどのデータ保存
- エネルギー: スマートメーター、太陽光発電システムなどのデータロギング
- 航空宇宙: 飛行データ記録、機器の動作状態監視
具体的な特徴が活かせるケース:
- 高速なデータの書き込みが必要な場合
- 頻繁にデータの書き換えが発生する場合
- 耐久性と信頼性が求められる場合
具体的なユースケース:
- 工作機械の振動データロギング: 機械の異常を検知するために、高頻度で振動データを記録
- 車載機器のイベントデータレコーダー: 事故発生時の車両状態を記録
- スマートメーター: 電力使用量をリアルタイムに記録
MRAM
利用されている分野の例:
- 産業用機器: 高速なデータ処理が必要な制御システム
- ネットワーク機器: ルーター、スイッチなどの設定情報やログの保存
- ストレージ: 高速なデータアクセスが必要なSSD
- AI: ニューラルネットワークの学習データやパラメータの保存
具体的な特徴が活かせるケース:
- 高速な読み書きが必要な場合
- 高い耐久性が必要な場合
具体的なユースケース:
- 高速PLC: リアルタイム制御や高速データ処理が必要なアプリケーション
- ネットワーク機器: ネットワークトラフィックを高速に処理
- AIエッジデバイス: 学習済みモデルや推論結果を高速に保存
このように、PLCに搭載される不揮発性メモリは、それぞれの特性を活かして様々な分野で利用されています。PLCの用途や要件に応じて、最適なメモリを選択することが重要です。
メモリ特性の比較
特性 | フラッシュメモリ | EEPROM | FeRAM | MRAM |
速度 | 低速 | 中速 | 高速 | 高速 |
消費電力 | 中 | 低 | 低 | 高 |
耐久性 | 低 | 中 | 高 | 高 |
データ保持能力 | 中 | 中 | 高 | 高 |
コスト | 低 | 中 | 高 | 高 |
メモリ容量 | 大 | 小~中 | 小~中 | 中 |
PLCに最適なメモリ選びのポイント
PLCに最適なメモリを選ぶには、以下のポイントを考慮する必要があります。
- 必要な容量: 格納するプログラムやデータの量によって、必要なメモリ容量が異なります。
- 書き換え頻度: 頻繁にデータの書き換えを行う場合は、高耐久性のメモリが求められます。
- 速度: リアルタイム処理など、高速な動作が求められる場合は、高速なメモリが必要です。
- 消費電力: バッテリー駆動のPLCなど、消費電力が重要な場合は、低消費電力のメモリを選びます。
- コスト: コストを抑えたい場合は、フラッシュメモリやEEPROMが適しています。
これらのポイントを考慮し、PLCの用途や要件に最適なメモリを選択することが重要です。
FeRAMの特徴
FeRAMは、PLCで利用される不揮発性メモリの中でも、特に以下の点で優れています。
- 高速書き込み: 他の不揮発性メモリと比較して、書き込み速度が非常に高速です。
- 低消費電力: 動作時の消費電力が少なく、PLCの省電力化に貢献します。
- 高耐久性: 書き換え回数制限が非常に高く、長期間にわたって安定して使用できます。
- 優れたデータ保持能力: データ保持能力が高く、重要なデータを安全に保存できます。
これらの特徴から、FeRAMは、今後ますますPLCの用途で重要な役割を担っていくと考えられます。