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不揮発性メモリとは?種類やそれぞれの特徴、用途を解説
不揮発性メモリは、コンピュータやスマートフォンなどで使われる記憶装置(メモリ)の一種で、外部から電源を供給しなくても記憶を保持することができることが特徴です。ここでは、不揮発性メモリの種類やそれぞれの特徴、用途について解説します。
目次
- 不揮発性メモリとは
- 不揮発性メモリの種類と特徴
- 不揮発性メモリの仕組み
- 不揮発性メモリの用途
- 人口知能(AI)への不揮発性メモリの応用
不揮発性メモリとは
不揮発性メモリとは、コンピュータやスマートフォンなどで使われる記憶装置(メモリ)の一種で、外部から電源を供給しなくても記憶を保持することができるメモリです。
現在のコンピュータでは、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)で直接、高速で扱うデータは揮発性メモリ(外部からの電源がないと記憶を保持できない)に保持され、それほど頻繁に利用されないデータは不揮発性メモリに保持されることが一般的です。
不揮発性メモリには、半導体、磁気テープ、光ディスクなどから構成された多くの種類のメモリがありますが、ここでは半導体を用いた不揮発性メモリに限定して説明します。
不揮発性メモリの種類と特徴
不揮発性メモリは大きくわけて、読み出し専用のメモリ(Read Only Memory:ROM)と書換え可能な不揮発性メモリの2種類があり、前者は製造工程で情報を書き込まれており、後者はユーザにより情報を任意に書換ができます。
ROMには、製造工程で情報を書き込むマスクROM(MASK ROM)や、ユーザが一度だけの書き込みが可能なOTP ROM(One Time Programable ROM)などがあります。書き換え可能な不揮発性メモリでは、1970年代、1980年代にそれぞれ実用化されたEEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュ(FLASH)メモリが広く使われています。
さらに、2000年代以降、高速で書換が可能な、強誘電体メモリ、磁気抵抗メモリ、抵抗変化メモリ、相変化メモリが”エマージングメモリ”と呼ばれて注目されています。これらエマージングメモリでは、書き換え、読み出しがランダムにできるようにしたRAM(Random Access Memory)は、FeRAM (Ferroelecric RAM; エフイーラム、またはFRAM;エフラム)、MRAM (Magnetoresistive RAM; エムラム)、 ReRAM(Resistive RAM; アールイーラム)、PCRAM(Phase Change RAM; ピーシィーラム、またはPRAM; ピーラム)と呼ばれています。
それぞれの、メモリの動作原理と定性的な特性は以下です。
表1. 不揮発性メモリのメモリ保持原理と特性比較
当社が製造しているFeRAMは、フラッシュメモリに比べて記憶容量は小さいですが、書換速度が速く、書換回数が極めて高く(フラッシュメモリの10万倍以上[2])、書換にともなう消費電力が低い特徴をもっています。製造開始から25年経つFeRAMは、他のエマージングメモリに比べてその成熟度が高く、信頼性も高いと考えられます。
また、当社が扱うReRAMは書換のアルゴリズムの最適化によりフラッシュメモリより多くEEPROMと同等な100万回の書換回数を実現しているのが特長です。補聴器のような、電池駆動デバイスの必須要求である低ピーク動作電流と低消費電力を優先するために、書換スピード自体は一般的なReRAMよりは遅くなっています。
不揮発性メモリの用途
フラッシュメモリは、書換速度は遅いが、極めて大容量であるため、コンピュータのストレージメモリとして用いられています。エマージングメモリは、低消費電力で、高速でほぼ無限に書換が可能なことから、産業用機器のデータログ、スマートメータ、RFID(Radio Frequency Identification)などがあります。
人口知能(AI)への不揮発性メモリの応用
最近の生成AIの普及により、その機械学習に膨大なデータを処理するコンピュータの消費電力が急激に増大している問題があります。消費電力を上げる原因の一つは、コンピュータ内の揮発性メモリが使用されていることです(機械学習の際の”重み付け”に使用されている)。
機械学習は、いくつかの層からなるパーセプトロンといわれる、 人工ニューロンやニューラルネットワークによって行われます[3]。各層(ノード)では積和演算が行われ、結果は”重み”をつけて次の層に送られます。この重み付けに不揮発性メモリにすることで、に消費電力を低減できると言われています。
図5. エコーステートネットワークの原理。各層でのデータは”重み”win、wR、およびwoutをかけて伝搬させる。リザーバーコンピューティングでは、リザーバ層に非線形な物理現象を利用し、重みwoutのみを調整する。
FeRAMを用いた機械学習の研究が盛んにおこなわれており、特にエコーステートネットワークと呼ばれる手法の一つであるリザーバコンピューティングが注目されています(図5)。重み付けの調整をアウトプットの最終ノードみで行い、中間のリザーバ層では、非線形な物理現象を利用することで、低消費電力の機械学習がでるといわれています[4]。
FeRAMに使う強誘電体結晶において当社と共同研究を行っている、東京大学大学院工学系研究科の高木信一教授の研究室から、強誘電体の分極量と電界の非線形な関係を利用したリザーバコンピューティングが発表され、世界から大きな注目をあつめています[5]。
参考文献
[1] G. Molas et al., Appl. Sci. vol. 11, p.11254 (2021),
B. Li, et al. p. 381 GLSVLSI 2019、および弊社とメモリ製造メーカ様(Everspin, Infenion, Samsung, Kioxia)のデータを参考に作成した。
[2] 富士通セミコンダクターメモリソリューション, FeRAMの概要と実績(ホワイトペーパー)
[3] W. Gardner et al., Atmospheric Environment Vol. 32, p. 2627 (1998),
M. POPESCU, et al., WSEAS TRANSACTIONS on CIRCUITS and SYSTEMS, Vol. 8, p. 579 (2009).
[4] 田中剛平他「リザーバコンピューティング」森北出版株式会社 2021.
K. Kamimura, et al., ESSDERC 2019,
S. Oh, et al., APL Mater. 7, 091109 (2019),
M. Lederer et al., IEEE T. Electron Devices 68, p. 2295 (2021).
[5] E. Nako, et al., 2020 Symp. VLSI T, S. Takagi et al, IPRS 2024.